【インタビュー記事】世界が注目するニッポンの‘’禅‘’:VUCA時代の現代であるからこそ求められる ’’引き算の哲学 '' 。(ルジュナ合同会社 中川直紀代表) 

Updated: Sep 28


東洋哲学や仏教思想を融合させたリーダーシップ開発を手掛ける人材育成企業、ルジュナ合同会社。今回は同社の代表、中川直紀氏に、東洋型リーダーシップの真意と、欧州において注目を浴びる日本のZEN(禅)について、ご自身の見解を語っていただきました。

Horizon Consulting 金栗(以下、HC金栗): 御社は、「オリエンタルなマインド・東洋哲学を融合させた教育で、世界に通用する人財育成を」という活動ミッションの下、様々なリーダーシップ開発プログラムを日本のグローバル企業を中心にご提供されていますが、世の中の多くのビジネスパーソンが欧米型(特にアメリカ発)のリーダーシップ論を学ぶ中、我々日本人の歴史や文化に影響を受けている東洋哲学や仏教思想に重きを置かれているのはどのようなお考えがあってのことなのでしょうか?

ルジュナ合同会社 中川代表 (以下、中川氏):ご質問ありがとうございます。リーダーにも様々なタイプがあるのは確かです。それを論理的に分類・分析し、各タイプの行動パターン、思考特性を効率的に再現できるようにするのが欧米型のリーダーシップ論だと捉えています。しかし、現在のVUCA時代*には、経営や事業が想定し得ない難局に直面することが頻発していて、乗り越えられないまま衰退するケースが増えています。


*VUCA時代とは?

Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなぎ合わせた造語。これらの四つの要因により、

現在の社会経済環境がきわめて予測困難な状況に直面しているという時代認識を表す言葉。



中川氏:複合的に様々な物事が絡み合い、誰かの利益が、容易に他方の損失になってしまう経済原理・社会構造では、簡単に「俺についてこい」的だったり、「君を支援・フォローする」的だったりするようなリーダー論で割り切れるはずがありません。また、こういった紋切り型リーダーを演じれば、周囲から信頼を得られず疎遠になってしまうでしょう。現実問題として、今の欧米型リーダーシップ論も新たな展開を余儀なくされているはずです。

HC金栗:なるほど。資本主義を大前提として編み出された欧米型のリーダーシップ論が、現在のVUCA時代において、通用しずらくなってきているということですね。

中川氏:はい。その中で私は、リーダーとしての責任を放棄することは奨めていませんが、リーダーという概念すらも一時横に置いて、まず人としてビジネスに関わる際の根本的な姿勢、心的態度に重きを置くことが重要だと考えています。この時に重要になるのが、インドや中国の哲学、そして哲学としての仏教です。


あたりまえに在る。という考えを無くすということ。

人は人との「間柄(あいだがら)」をつくることで、人間(社会的)になります。人間関係で悩むということは、この間柄が上手く成立していないことを意味します。では、「間柄」とは何か。ここに東洋的な思考が必要になるわけです。少しわかり難いかもしれません。簡単に言えば、あたりまえに在るという考えを無くすということです。


家族、友人、職場の人々は、あなたにとってどのようような「間柄」、つまり存在なのでしょうか。在ってあたりまえなのでしょうか。かけがえのない存在に感じたことはありませんか。そして自らの存在も含めて皆、永遠ではないということも。そう感じた時に、あなたがどのような心的態度へ変容するかが鍵となります。

現代社会のリーダーにまず求められることは、スキルでも知識でもなく、自己洞察力。そのカギとなるのが、禅が唱える’’引き算の哲学’’

さて、これをビジネスリーダーの観点に当てはめると、現代のリーダーに必要なことは、西洋ロジックありきではなく、先述のような観点に立った自己洞察力です。スキルや知識を身にまとうのは後の話として、まずは禅の考えにある、引き算の哲学(=すべてのことがあたりまえでないという考え)の理解を優先します。


先ず自己の存在すら「あたりまえ」でないことが解ってくれば、それだけであなたのリーダーとしての周囲との間柄は、確実に築かれていきます。そこに立脚した後で、欧米型のリーダースキルを備えておくことは、価値があると考えます。

この根本を現代のビジネスパーソンに感じていただくことはとても重要なことであると考えるため、私は日々のリーダー育成の過程で、そのための内省や実践の場をご提供しています。

HC金栗:大変勉強になります。単なる知識の増強や、流行りの理論をたしなめるといった類のお話でなく、現代社会を生きるといったことに焦点を当てられているからこそ、禅の本質である引き算の哲学、そして、それによって高められる自己洞察力が大事になってくるわけですね。 

中川氏:おっしゃる通りです。

HC金栗: 次のご質問です。これは私が日本を離れて海外に住んでいることで強く感じること

なのですが、私が在住しているドイツをはじめ、欧州では ‘’ZEN(禅)‘’をモチーフとした部屋のデザインをしたり、実際に坐禅を日々組んで想像力を高める練習をしている人がいたりと、日本人以上に禅を生活に取り組んでいるヨーロッパ人に会う機会がとても多いと感じまています。禅を日々の生活に取り組むことで、具体的にどのような変化が生まれるのでしょうか?


中川氏:有史以来、日本を含む東洋哲学・思想が欧州に伝播したことは、ほぼ無かったと捉えています(古代インド数学は別)。欧州の人々は、洗練されたモノやコトへの価値を感応して理解する力、また、ブランド発信・創造力が大変優れていると思います。つまり、土壌が元々ある彼らにとっての「禅」は、新鮮さと共に、物的、心的に己の在りように適っているのでしょう。そこに高い価値を感じ、理解しているのではないでしょうか。むしろ今の日本人が学ぶべき志向性とも思えます。



自己洞察力を高めるには、自然との調和を感じながら、必要な範囲で動くということが重要。

中川氏:ご質問にある「具体的にどのような変化が生まれるのでしょうか?」の「変化」の

捉え方として、それは結果論になります。先のリーダー論に通じるのですが、欧米型の考え方は、目標・目的があり、そこに向かう行為、行動があり、得られた変化を一つの結果とします。


ただ禅の考え方は、そのような近現代的な論理思考の流れとは異なります。これは「無目的」的に動くことを奨励しているのではありません。自然(宇宙の流れ)との調和を感じながら、必要な範囲で動くということです。

HC金栗:目標・目的を定めることを前提としていること自体が、禅の考えから反れるし、自己洞察力を磨くことに対して弊害になるということなのですね。目から鱗です。

中川氏:そうですね。例えば、資本を前提とする経済活動が、人間本位の目標によって大

量に物やサービスを作っています。そして結果としての成長性を競って計ることの代償を考えなければなりません。


果たして経済成長の影で何が起こっているのでしょうか。壊さなくても良い自然まで破壊をし、不必要に生態系に入り込み、無駄に命を奪っています。果たして、そこに有難さを感じている人がどれほどいるのでしょうか。そのような社会システムは、いずれ破綻をしてしまいます。

坐禅を普段の生活に取り入れることによって、自分と向き合い、自然と同調する。そうすることによって見えてくる自身の在り方。

話が飛躍してしまいましたが、禅の考え方、その実践として坐禅を生活に取り入れることによって、結論、変化することはあると思います。人生で直面する苦境や、危機的状況下でも、心の平穏を持ち続けられたり、人間関係が修復できたりと、絶対ではありませんが、人生が結果的に良い方向に行くと言えるでしょう。そういった個々における変化が、ひいては経済活動を自然調和させ、エコシステムの形成につながると思うのです。


また、禅を通して自己の潜在能力が開花してくると、自分の目に映る世界を、理想的な良きものに変えていくこともできると捉えています。ただし、自然との同調によってであり、逆に禅へ期待をかけると不自然になり、かえって顕在意識が強くなってしまいます。あくまでも、今に生きている自分と向き合う時間を作るということです。この点における心的態度や実践方法は、弊社のプログラムでもご紹介することが可能です。

HC金栗:VUCA時代である現代であるからこそ、我々の生活にもともと深く根付いている、東洋哲学や禅の思想が求められる世の中であるということ、強く感じました。本日は、お忙しいところお話をお聞かせいただきありがとうございました。

中川氏 : こちらこそ、ありがとうございました。


中川直紀氏 プロフィール:

ルジュナ合同会社代表。大学では仏教学を専攻し、当初より坐禅指導を受け、現在も実践と哲学的研究を継続。

卒業後は、日本の教育に一石を投じたい一心で教育業界で経験を積み、研鑽を重ねる。 直近、日本航空の教育会社、JALアカデミーにおいて、グローバル化する大手日系企業へ人財開発・育成のコンサルティングを行い実績を積む。

上記の組織のまま、M&Aで伊藤忠、2年後にパソナ(両社とも大手企業)に吸収される。多国籍化し、3つの企業文化が入り混じる中で、リーダーとして部門・個人の目標を達成。新経営陣からの表彰を受ける。複雑で混沌とした状況だったが、まさに禅の実践の場と捉えて、心を平穏にし一貫性を保ったことが大きかった。周囲の信頼を得て実績を積めたのは、禅マインドのおかげと実感。起業後、Zenセミナー、研修を、企業向けに定期開催。SotoZen*と協業・探究も行う。*SotoZen:500年前からある禅を主とする仏教の一宗派。Appleの故スティーブジョブズもSotoZenに傾倒し、多くの影響を受けている。

ルジュナ合同会社 (ホームページ : http://www.rjuna.jp/)

【Horizon Consultingよりお知らせ】

Horizon Consultingでは中川代表のファシリテーションの下、禅ウェビナーを定期的に開催予定です。(使用言語は日本語に英語の追時通訳を挟みます。)新型コロナの影響で、ますますVUCAの強みを増す現代において、正しい座禅の組み方を学び、自己洞察力を磨くよい機会となります。

第1回座禅ウェビナーは、2020年10月8日予定。各回90分程度、ご自宅からでもご参加いただけるイベントです。詳細(英文)/お申込みはこちらから

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